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入居者破産=即退去なのか⁉

2020.09.11 | コラム

おかげさまです。蔭山です。

オーナーのための不動産チャンネルをご覧いただき、ありがとうございます。


今回は、法人テナントが倒産した場合の備え方について、お話をさせていただきます。


企業が倒産する場合、次の4つの種類があります。


破産手続き(破産法)

特別清算(会社法)

民事再生手続き(民事再生法)

会社更生手続き(会社更生法)


それぞれ、根拠となる法律が異なりますが、今回は破産手続きの場合でお話します。


まず、今お持ちの賃貸借契約書をご覧になってください。賃貸借契約書の多くには、借主が破産や特別清算等になった場合、貸主から解除できる文言があります。


しかし、現実的には、テナントが破産したからといって、その破産の事実だけで賃貸借契約を解除することはできないのが現状です。


判例上、この条項は無効とされるからです。この点は覚えておいてください。


現行法のもとでは、テナントが破産した場合の解約の可否は破産法53 条により規律されることになります。破産法53 条1項は次のとおりです。


「双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は契約の解除をし、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。」


と定めています。 同条項に従うと、テナントの破産を理由に建物賃貸借契約を解除できる権限を有しているのは破産管財人のみということになります。


したがって、賃貸借契約期間中にテナントが破産した場合には、破産管財人により賃貸借契約が解除される場合もあれば、賃貸借契約を続行する場合もあり得ることになります。


賃貸人としては、破産管財人次第で賃貸借が解除されるか続行されるかが決まるとなると、早期に方針を決めてもらうことが必要です。


しかし、破産管財人は破産当初は多くの業務に忙殺されている場合があり、速やかに賃貸借についての方針を決めるとは限りません。この場合、賃貸人は、極めて不安定な地位になりますので、賃貸人は、破産管財人に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか否かを確答するよう催告をすることができます。


これに対し、破産管財人が期間内に確答しなかったときは賃貸借契約を解除したものとみなされるのが、破産法53 条2項となります。


とはいえ、大半のテナントは、倒産後は賃料を支払えず「滞納」の状態になると思われます。


滞納となれば、話は変わります。長期間の滞納(債務不履行)によって信頼関係が破壊されたと言える状態であれば、これを理由とした賃貸借契約の解除が可能です。


法人の倒産と、賃料の滞納とは別問題です。


なお、敷金は、賃貸借契約における賃借人の債務を担保するものですから、テナントが破産した場合であっても、テナントの賃貸人に対する債務の担保としての機能を失うわけではありません。


未払賃料債権や原状回復費用を控除して、なお残額がある場合に破産管財人に返還することになりますが、いずれにしても、未払賃料期間が長くなり、敷金を超過すると意味がないため、解除の方向性であれば、早めに明け渡しまでもっていくことに越したことはありません。


専門的要素になりましたが、簡潔に申しますと、テナントが何らかの理由で倒産をした場合、その手続きの種類を把握して、交渉相手(管理処分権者)と連絡をとり、方向性とスケジュール感を早い段階で共有していくための行動に移すことが必要です。


さきほどの話は破産でしたが、破産以外の交渉窓口は次のとおりです。


【倒産手続き】


・破産手続き ・・・破産管財人

・特別清算  ・・・清算人

・民事再生手続き・・・再生債務者

・会社更生手続き・・・・更生管財人


管財人の場合、裁判所により,手続開始と同時に選任されます。


管財人に選任されるのは1人とは限らず,複数人が選任されることもありますが、実務上,破産管財人に選任されるのは個人の弁護士であることが大半です。


本日は以上となります。最後までご視聴いただき、ありがとうございました。

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おかげさまです。蔭山でした。