相続に備えた資産の組み換え
おかげさまです。
不動産コンサルタント蔭山達也です。
オーナーのための不動産チャンネルをご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、相続のお話です。
相続税は、ご存知のとおり、次のような基礎控除があります。
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
たとえば、子ども1人が法定相続人であると、3600万円までは相続税はかかりませんが、以前に比べると、相続税が発生するハードルというのはかなり低くなってきていますね。
たとえば、住宅ローンで4000万円の残債務が残っていても、多くの場合、住宅ローンは団体信用生命保険に同時加入しています。
相続税の算定では、住宅ローンなどの債務は負の資産として、債務控除されます。しかし、債務の要件は、「相続開始時において確実な債務」であり、団体信用生命保険に加入している場合には、住宅ローンは消滅する債務ですので、該当しません。つまり、住宅ローンで団体信用生命保険へ加入している場合、相続税の計算に住宅ローンは影響しない=住宅ローンの目的となっていた自宅はそのまま相続税の評価対象となります。
そういった観点で捉えていくと、案外、相続税というのは、一部のお金持ちだけの悩み、ということでもなくなってきているのが現状です。
では、自宅以外で不動産を相続する可能性がある場合に、効果的な対策はどうすればよいのか。
以前、相談があったのは、次のようなケースでした。親が保有している不動産で、法定相続人はお子様一人のみの資産の組み換え相談です。
財産のうち、分かりやすいように、資産を不動産だけに絞って話をします。
◇相続不動産
アパート:郊外
底地:都内一等地エリア
相続というのは、いつ発生するかは分かりません。準備しておいても、10年後、20年後になることだってあるわけです。お聞きすると親御さんは高齢ではありますが、かなり元気のようです。
そうなると、単に、相続税の圧縮という観点だけでは、良い悪いの判断はできません。
今の不動産収入と、相続後に、その不動産から得る収入、両方の観点で見ていくのがポイントです。
事例は次のような2つの不動産でした。
・郊外アパート
土地面積500㎡
路線価 10,000円
借地権割合 60%
借家権割合 30%
賃貸割合 20部屋/30部屋(10部屋空室)
◆相続評価
A 貸家建付地の評価計算
相続税路線価10,000円×面積500㎡=50,000,000円
50,000,000円×(1 - 借地権割合60% × 借家権割合30% × 賃貸割合20/30)
→4400万円
B 小規模宅地の特例計算(貸付事業用地は200㎡までを限度に50%減額)
4400万円×200㎡/500㎡×50%
→880万円減額
4400万円-880万円=3520万円
土地相続評価 3520万円・・・ア
建物は、固定資産評価証明の評価額2000万円
2000万円×(1 - 借家権割合30% ×賃貸割合20/30)
→2000万円×(0.8)→ 1600万円
アパート 建物相続評価 1600万円・・・イ
アパート相続評価 ア + イ = 5120万円
- 都内底地
土地面積120㎡
路線価 700,000円
借地権割合 70% ・ 底地割合 30%
◆相続評価
路線価700,000円×面積120㎡=8400万円
8400万円×30%
→2520万円
*小規模宅地の特例は面積200㎡限度、アパートで限度額を使用するため使用不可
底地相続評価 2520万円
アパート5120万円 + 底地 2520万円 →合計 7640万円
相続税計算
相続評価 7640万円 相続人1名(子)
7640万円 - 基礎控除額(3000万円 + 600万円×1名)
→4040万円(相続財産)
4040万円×税率20%-控除200万円
→608万円(相続税)
相続税 608万円
ここでのポイントは2つ、現状の収入と組み換え物件の有無です。
アパートの評価では、賃貸割合というのがあります。この賃貸割合を高めておくこと=満室に近ければ近いほど評価減に繋がります。
満室経営にすれば、年間1500万円近くの収入になる不動産でした。
実勢価格では1億円です。売却して1億を頭金にして融資を組んで買い替えという方法もありますが、残念ながらご年齢もあり融資は不可能でした。また、1億円で他の物件を買い替るにしても、その予算で同じ収入の物件を都内近郊で探すほうが難しいです。
それであれば、稼働率66%の現状を満室経営にして相続時の評価を下げること、そして、今の収入を上げておくほうが、メリットが大きいです。
反対に、底地はどうでしょうか。
都内一等地にあるため、相続評価も高く、また、満室経営のしようがありません。
地代を値上げするのは容易ではありませんので、今の地代をベースにして、将来設計を組み立てることになります。地代は月額3万5千円年間で、42万円です。極端に今の収入を上げていくことは、底地である以上は、ほぼ不可能です。
そうなると、良い条件で売却出来るのであれば今のうちに手を打っておくことが重要です。この案件では、借地権者、つまり借地のうえの家に住んでいる人のことですが、この方が、底地を買いたいという申し出がありました。その価格も相続評価とほぼ変わりません。
それであれば、相続で持ち続けるより、或いは第三者に売却するより、はるかに良い条件で資産組み換えが可能です。
今、売却して、そのお金で底地より相続評価の低い不動産に組み替えておき、且つ、収入も上げておくべきです。それが次のような内容です。
資産組み換え案
底地売却後、売却金額で賃貸マンション1室を購入
都内ワンルームマンション購入(オーナーチェンジ)
◎購入価格 2000万円
◎月額賃料 90,000円
◎相続評価 土地3,000,000円
建物3,500,000円
合計6,500,000円
貸家建付地計算 (借地権割合70%エリア)
土地
3,000,000円×(1-借地権割合70% × 借家権割合30% × 賃貸割合1/1)
→237万円 ア
建物
3,500,000円×(1 - 借家権割合30% ×賃貸割合1/1)
→210万円 イ
土地建物の相続評価
ア + イ = 447万円
アパート5120万円 + 区分マンション447万円
→合計5567円
5567万円- 基礎控除額(3000万円 + 600万円×1名)
→1967万円(相続財産)
1967万円円×税率15% - 控除50万円
→2,450,500円(相続税)
相続税608万円 < 相続税 245万円
資産組み換えにより約 363万円の相続税圧縮
*区分マンション実質収入
年間収入1,080,000円 - 年間支出200,000円= 実質収入 880,000円
(家賃×12ヶ月) -(管理費×12ヶ月 + 固定資産税)
*底地収入
年間収入420,000円 - 年間支出150,000円= 実質収入270,000円
(地代×12ヶ月) -( 固定資産税 )
資産組み換えにより年間収入 約610,000円UP
流通性という点でも、底地より、区分マンションのほうが、換金もしやすいため、相続となった後の資産組み換えもやりやすくなります。
いかがでしょうか。
不動産によって、残す不動産、組み換えておく不動産と分けて捉えていけば、相続税対策と、今の収入UPにもつながります。
相続自体は、いつ起こるか分かりません。繰り返しますが、将来に備えながらも、今の収入にも焦点を充てておくべきことが大切です。
ご所有不動産の相続でご心配な面がある方は、お気軽にご相談ください。
以上となりますが、最後までご視聴いただき、ありがとうございました。
ぜひ、チャンネル登録もよろしくお願いします。
おかげさまです。蔭山達也でした。