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不動産の売り時は2021年なのか

2021.09.10 | コラム

おかげさまです。

不動産コンサルタント蔭山達也です。


オーナーのための不動産チャンネルを
ご覧いただき、ありがとうございます。


前回、週刊ダイヤモンドの不動産特集から、
コロナ過、そして、オリンピック後における
不動産市況について買い時かどうかの観点で
読み解いていきました。


その際、都内におけるマンションは
高止まりになっている現状をお届け
しましたが、それでは今は売り時な
のか、という観点から、
今回はお届けしていきます。


「生産緑地問題」という言葉を
聞いたことがある方も多いのでは
ないでしょうか? 


2022年問題とも言われますが、
この問題の影響で、都市部の不動産
価格の下落や空室物件の増加が懸念
されています。

この問題の何が、不動産価格や空室に、
それほど影響を及ぼすのか、気になる
人は多いと思います。


そもそも生産緑地とは何なのか


生産緑地とは1992年に改正された
生産緑地法」に基づいていて定められた
地域地区です。


市街化区域にありながら、一定の条件で
税負担の軽減などが受けられる農地や
山林のことです。


かなりざっくり言うと、「都市にある農地」
ですね。


正確には生産緑地地区と言いますが、
「生産緑地法」に基づき、
市街化区域内において、
主に次の3つの要件を満たす地区です。


【1】災害防止など都市生活の環境の保全に
相当の効果があり、公共施設などの用地
として適している

【2】一団の農地で面積が500㎡(約151坪)以上である

【3】農業の継続が可能な条件を備えている


これら3つの条件を満たした農地の
所有者に同意を得て、管轄の自治体が
都市計画法に基づき指定した区域の
ことで、
1992年に「生産緑地法の改正」が実施されました。


この、「生産緑地法の改正」がポイントです。


「生産緑地」においては、
30年間の営農期間が義務となり、
生産緑地の所有者が亡くなるなどの理由で
農業を辞めるか、あるいは指定を受けた日
から30年経過するまでは、買取りの申請や
売りに出すことはできなくなりました。


ですが、
この30年間は、税制優遇を受けられるという
恩恵を受けられることになりました。


そして、来年の2022年が、
1992年から30年後にあたります。


つまり、
生産緑地の指定を受けた土地所有者は、
2022年以降は固定資産税や相続税等の
税制優遇が受けられなくなります。



また、営農義務もなくなるため、
高い税金を課されてまで農業を営む
必要性がなくなり、生産緑地指定が
解除された農地を手放す人が大量に
現れてしまう可能性があります。

農家の高齢化による後継者問題もあり、
税制優遇がなくなったら農地を手放すと
いうのは自然な流れと目され、農地が
大量に売り出されることが予想されます。


期限到来により、農地が大量に売りに
出される可能性をハウスメーカーや
マンションデベロッパーが期待しており、
これら広大な土地が不動産会社に売却さ
れると、結果的に需要と供給のバランス
が崩れ、不動産価格や賃貸物件の賃料の
下落につながる恐れがあります。


新築住宅の過剰供給が、
空室や不動産価格の暴落を招く恐れ


これが「2022年問題」と言われています。


生産緑地に指定された区域の殆どは
首都圏・近畿圏・中京圏に集中しています。


全国で約1万4,247haある生産緑地のうち
約8割が2022年問題に該当すると見られて
います。


国土交通省によれば、
東京都には約3,000ha、東京ドーム724個分の
生産緑地があります。


しかし、東京都の行政区別に見ていくと
行政区によって生産緑地の面積は大きく
異なり、市部と区部の比率は9対1、
つまり東京都の生産緑地の9割程度は
市部に偏っています。



最も多いのが八王子、町田、立川となっています。


その一方で、都心部の山手線の内側には
生産緑地は存在しません。


したがって、
東京都にある約3,000haある生産緑地のうち、
9割にあたる2,700haが都下にあります。


例えば、
そのうちの3%が売りに出すと、約80haです。


都下における新築マンションは
ここ数年では、年間で約4,000戸の
供給です。その戸数で、1戸当たり70㎡、
容積率が200%の土地だと仮定すると、
都下における年間のマンション用地は
約12.25haです。


さきほどの80haの土地が売りに出されると、
約6年分の新築マンション用地が一斉に
マーケットに出てきます。


マンションとは限らず、
建売や賃貸マンションなどの集合住宅も
ありますが、いずれにせよ、供給が過剰
になる状況が想定され、関係するエリア
における住宅市場に影響する可能性が
大いにある、と言われています。


一方、東京23区内ではどうでしょうか。


生産緑地面積が多い上位2区は
練馬区と世田谷区です。


しかし、
1位の練馬区の生産緑地は埼玉県寄りに
集中し、2位の世田谷区は路線が多く
張り巡らされているので、路線の周辺
にも生産緑地がありますが、路地の一
角などかなり小さい規模になります。


このように生産緑地は駅から少し
離れているため、駅近の土地の暴落は
考えにくいです。


東京23区全体で見ても需要と供給の
関係からも現在の需給バランスが
崩れるほどの生産緑地はなく、
さらに駅から徒歩10分圏内にある
ような生産緑地はほとんどありません。


そういった点では、2022年問題は、
23区内においては、都下ほどの影響は
ないものと想定できます。


総括すると、
「2022年問題」の影響を受けやすいのは、
郊外かつ駅から少し距離があるファミリー
向けの住宅でしょう。



ファミリー向け住宅は駅から
少し距離があっても需要があります。

そのため、
生産緑地がデベロッパーや
ハウスメーカーに売り渡され、
マンション、建売住宅が乱立する事態に
なれば、供給過多になり、売買及び賃貸
の価格は下落する可能性はあります。


賃貸マンションやアパートなどの
投資物件も同様です。


新築アパートが多く建てば、
その分供給過多で空室率は上昇し、
結果的には家賃下落につながっていきます。


逆に、
都心部の駅に近い物件や生産緑地が
少ない23区内などの物件の希少価値は
損なわれない可能性が高く、2022年問題の
影響はかなり低いと言えます。


ただし、住宅用地の供給には、
建築確認から各種手続・建設計画・着工・販売
まで長期間かかるので、2022年になったと同時
に大きな影響が出ることは考えづらいです。


そして、政府もそのことを踏まえて、
法改正より対策を実行しています。



その1つが、2017年の生産緑地法の改正です。


改正により
「特定生産緑地指定制度」を創設し、
従来の税制優遇措置を10年間延長も
できるため、分散すると思います。


とはいえ、さきほど申した都下、郊外で
該当するエリアは、いずれ不動産市場に
おいては供給過多の影響を受ける可能性
は十分にありますので、もし、そのエリア
で不動産を所有しており、近い将来に売却
を検討しているのであれば、全体的に高止
まりしている今の市況のなかで、
動き出すのも、選択の一つです。


以上となります。


最後までご視聴いただき、
ありがとうございました。

ぜひ、チャンネル登録もよろしくお願いします。


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概要欄のお問い合わせからお願いいたします。


おかげさまです。蔭山達也でした。